はじまりのおわり。〜もう一度、ふるさとを外から想う旅へ〜
ご挨拶
こんにちは!横手市地域おこし協力隊のオバラソウです。
記録的な少雪となった冬も終わり、いよいよ春本番間近の横手市。
ふるさとに帰ってから迎える三度目の春、僕の協力隊の任期は残り半年となりました。
長いようで短い3年間。
ここまでの2年半、僕は非常に濃密な時間をこのふるさと横手で過ごしてきました。
まさに「光陰矢の如し」という言葉がうってつけ。残り半年の活動期間にすでに名残惜しさを感じております。
これまで活動をあたたかく見守ってくださる横手市のみなさん、いつも近くで支えてくれるみなさん。
まずはこの場をお借りして感謝申し上げたいと思います。
将来を見据える旅へ

さて、去る3月19日・20日、僕は横手市を飛び出して愛知県岡崎市に行き、岡崎市内の中小企業の現状や情報発信について勉強してきました。
残り半年となった協力隊の任期で自分が何をすべきか。
任期終了後にどう生きて行くのか。
この旅では、地域おこし協力隊を退任した後の道筋と、活動の締めくくりに向けて僕が出すべき「答え」の大きなヒントを得た有意義な旅になりました。
僕がなぜ岡崎市を選んだのか。そして何を学んだのか。
振り返っていきたいと思います。
なぜ愛知県岡崎市へ?

理由はシンプルで、僕が地域の情報発信や動画編集をする上で最も参考にしているYouTuberグループの活動拠点が岡崎市だったからです。
逆に言えば、彼らの動画を観ていなければ、岡崎市の存在を知る機会はほとんどなかったかもしれません。
また、そのYouTuberグループは、単に岡崎市在住でYouTubeの活動をしているというだけでなく
「岡崎市観光伝道師」として地域のイベントや地場企業とのタイアップをしながら地域を盛り上げています。
今回の旅では、YouTubeの動画内で出てくるお店や撮影地となった公園、そういったスポットを巡る、いわば「聖地巡礼」。
そして市内の各所を巡りながら、実際にどういった雰囲気なのか、どんな人が来ているのかを肌で感じながら自分自身が取り組んでいる情報発信に活かすということが最大の目的でした。
また、今回は、「岡崎ビジネスサポートセンター:通称Oka-Biz(オカビズ)」に訪れ、地域の中小企業の現状を聞きつつ、自分自身が今後横手で情報発信をする上でどんなことを考えるべきかについて研修を行いました。
地域ではなく、「人」にめがけて -オカビズでの学び-
オカビズは2013年に10月に岡崎市と岡崎商工会議所で開設された、岡崎市が運営する「中小企業のための無料の経営相談所」です。
数多くの相談事例がある中で、オカビズが地域の中小企業の支援をする上で最重要としているのが「売上UP」。
開設から10年、たくさんの成功事例を生み、「行列のできるビジネス相談所」として、連日相談者が後を絶ちません。
オカビズで僕を迎えてくれたのは、オカビズの元センター長で現在は武蔵野大学教授の秋元 祥治さん。

横手市に比べれば人口規模のかなり大きな岡崎市において、どういった考え方をベースに中小企業の売上UPのお手伝いをしているのかを聞くと
「私たちが中小企業を支援、もしくはなにかアドバイスをする上で大切にしていることは、その企業や店舗、商材などの魅力はどんなものがあるのか、また、それらをどう言語化していくか、ということです。」
と答えてくれました。
「売上UPのお手伝いをする中で、僕は地域性はあまり関係ないと思っています。地域性に着目するということも大事な場面はありますが、とにかくそのお店や商品の魅力がなんなのか、どこにあるのかを大事にする。そうすれば、どんな地域でも結果は必ずついてきますし、オカビズでも多くの事例が実際にありますからね。」
と、オカビズでの事例のをもとに、成功の「極意」とも言える部分を厚く熱く語ってくれました。
また、YouTuberの地域の経済への影響について
「正直、YouTuberの経済効果についてははっきりとはわかりません。YouTubeを通じて露出が多くなった一部の店舗の客足はもちろん伸びてきているとは思いますが、地域全体ではそういう結果が数字として明確に見られる部分ではありません。」
「オカビズがお手伝いする中小企業の中でも、たとえば墓石屋さんとか、そういうYouTuberたちとはあまり関係ないところでも売り上げが伸びているところはあるし、そういう意味でいくと地域性はあまりないのだと思います。」
その地域の環境や状況によってではなく、あくまでも企業の強みや商品、お店の魅力、人の魅力に着目してお手伝いしていると秋元さんは語ってくれました。
オカビズで得た、情報発信を見つめ直すきっかけ
普段僕が行っている情報発信と照らし合わせて考えてみると
「自分の写真や文章は、ちゃんと魅力を言語化して伝えられているだろうか」
「地域性を気にしてうまく発信できていないものもたくさんあるのではないか」
と、自分に対する問いが浮かび上がると主に、秋元さんの言葉がものすごく身に染みて感じられました。
また、協力隊の退任後もさまざまな情報発信をしていく予定だということを秋元さんに伝えると
「今後、小原さんに情報発信をお願いしたい!っていう人を増やしたいのならば、とにかくキュレーションできる人間になるべき。それができれば自然と結果が残り、その結果が新たな仕事につながる。オカビズはそうやってこれまでたくさんの事例を生み出してきましたから。」
「キュレーションできる人間になることによって小原さんが結果を生み出し、そうすると“小原さんに情報発信をお願いしたい!”という人が増えてくるはずです。“横手市だから”よりも、“横手市にいる小原さんだから”というかんじで、結果を生み出しながら小原さんの価値を情報発信によって積み上げていくといいと思いますよ!」
とありがたい言葉をいただきました。
※キュレーション=情報を選んで集めて整理すること。 あるいは収集した情報を特定のテーマに沿って編集し、そこに新たな意味や価値を付与する作業を意味する言葉。
自分にとってあまり馴染みのない「キュレーション」というの言葉に、情報発信者としてこれからどんなことをすべきか、ものごとをどんなふうに捉えるべきか、明確な道筋が見えてきた気がします。
“横手にオバラソウあり”
僕が目指す人間像が見え、地域を元気にするための自分自身の在り方を考える大きなヒントを得た、とても有意義な時間になりました。

1人の視聴者として「聖地」を巡る

2日目は岡崎市内各所にあるYouTuberの撮影場所:聖地や、観光名所、地域のお店を巡りました。
市内の各所を巡る中で僕がまず感じたのは…
「ここ、見たことある!」
というところがたくさんあるということ。


地元にいる人にとってはもしかすると取るに足らない景色も、YouTubeを通じて何度も見たことがある僕にとってはまさに「聖地」と呼べる場所がたくさんあったのです。
観光地でもなく、人通りのあまりない街角でも、YouTuberの一視聴者として興奮するポイントがたくさん。
「どこに行ってもおもしろい!」
これまでケータイやテレビの画面越しに見ていた景色の中に自分がいるということ、それ自体に大きな価値を感じることができました。
しかし、岡崎市での発見はこれだけではありません。
ジャズの街、家康の故郷 -さまざまなコンテンツが入り乱れる岡崎市-
聖地巡礼をする中で感じたのは、岡崎市が多くのコンテンツが入り乱れている街ということでした。


ジャズの街であり、家康生誕の地でもある岡崎市。
YouTuberをきっかけにこの街を訪れた僕にとっては、新たな発見が絶えませんでした。
岡崎市の食文化、横手市との共通点、名産品などなど…
あれも知りたい!あそこにも行ってみたい!という、さまざまな発見が新たな意欲に繋がりました。
街にいる人も多様で、お年寄りの方もいれば、僕と同年代かもっと若い世代の方も、外国人の方も、とにかくいろんな人がこの街を歩いている。
たとえば、大河ドラマをきっかけに岡崎市を訪れた人がいれば、きっと僕と同じように「岡崎市ってこれも有名なんだ!」という発見をしている人が多いでしょう。
今回は一つ一つを深掘りする時間こそありませんでしたが、これらの発見が「またこの街に来たい」という気持ちを大きくするきっかけになりました。
もう一度、外からふるさと横手を想う

岡崎市を巡る中で常に僕の頭の中にあったのは「横手はどう見られているんだろう」ということ。
たとえば、雪まつりかまくらが有名な横手市で、かまくらを見にきた観光客の方が新たな発見をしてくれているのか。
横手やきそばを食べに来た人が、横手やきそば以外に何か楽しんで帰ってくれるのか。
もしそれらが叶っていないのならば、僕はどんな情報発信をすべきか。
情報発信をする人間として、自分がどんな人間になるべきか。
この旅ではその答えに辿り着くヒントを得ることができました。
ここまでの協力隊の活動を通して知り得た横手市の文化や歴史、食など
僕自身が感じている横手の魅力を、僕自身が軸・起点になり、つまり、”地域をキュレーション”していきながら
外に向けて発信しなければならないという大きな使命感を感じ、その使命感こそが将来の道筋だと確信しました。
これまでは横手市にいる人に対して、ふるさとの魅力を発信する機会が多くありましたが
これから横手市を盛り上げていくためには、もっと市外の人に横手のさまざまなコンテンツを知ってもらう必要があると痛感した、学びの多い旅になりました。
僕のこれから

地域おこし協力隊の任期は残り半年。
しかし、僕の横手市での再スタートはまだはじまったばかりです。
つまり、僕にとって協力隊の任期が終わるということは
“はじまりのおわり”でしかありません。
残りの半年は、協力隊任期後の準備に集中する時間にしたいと思っています。
具体的には、横手市の人ともっと密に繋がり、さらに市外の人とも繋がり、情報の出入り口を増やしていかなければなりません。
そして、その繋がりで得た地域の新たな発見を外に向けて発信するプラットフォームの準備=情報発信をライフワークにして横手で生きていく地盤作りをしていかなければなりません。
協力隊任期後は、作った地盤をもとにもっともっと横手市の存在感を強める仕事をしていく予定です。
生涯を通じてその仕事を全うし、また、次世代に繋げていくことをこれからのふるさと横手での人生のテーマとし
死ぬまで地域のために力を尽くしたいと思います。
あらためて、これまで活動を見守ってくださるみなさん、支えてくれるみなさん、本当にありがとうございました。
そして、これからもオバラソウをよろしくお願いいたします。