雪国の伝統文化【わら細工】
もうすぐこの街には冬の便りが届き、横手の雪祭りかまくらが始まります。
その時の幻想的な風景を、より素敵にしてくれている「わら細工」をみなさんは知っていますか?
「雪踏み俵」や「みのぼっち」と呼ばれるものが、かまくらでは良く見かけるわら細工です。
また、男鹿のなまはげが羽織っている「ケラミノ」、「草履」などもわら細工です。
こうして文字だけ見るとイメージしづらいですが、 実際に写真で見てみると、どうでしょう?



見たことのあるものが一つでも、あるのではないでしょうか?
わら細工は昔の雪国には欠かせないものだったことが、なんとなく分かりますね。
ただ、現代社会において、なかなか馴染みのないものとなりました。
米の収穫が機械化され藁を補う工業製品が次々と出回り、わら細工は日常から消えてしまったのが原因です。
地域おこし協力隊として、雪国横手の伝統工芸、わら細工について知りたくなった私、吉成は、
数少ない職人の一人である、森田照雄さんにお会いすべく、先日、浅舞公民館蛭野分館で開催されたイベント「つぎ なにつくろう」に参加しました。
わら細工職人・森田照雄さん

森田さんは現在84歳(昭和12年生まれ)。
わら細工を始めたきっかけは、62歳を過ぎ、横手盆地の長い冬、今後何をして過ごすかと考えていた際、近所の方々がわら細工を作っているのを見て興味が湧いたのだそうです。
会場には森田さんの作品がたくさん展示されていました。

実際に体験しました!
わら細工の基本、藁から縄を作る「綯う(なう)」工程を今回は体験させていただきました。

森田さんの手捌きを見ていると一見簡単そうに見えるのですが、これがなかなか難しい…。

手先が器用だと自負していたのもあり、折角の機会!藁を綯えるようになりたい!と負けん気が湧きました。
コツを教わりながら、綯うこと数十分…。
初体験の私でも褒めてもらえるまでに成長することが出来ました!

ねじる・引っ張る・絡み合わせるを同時に行い、綯っていく。
出来なかったことが出来ることに変わる瞬間を体感し、童心に戻ったように感じました。
日本の美しい伝統工芸というものは、大人になってから良さを感じることが増えると思います。
実際、セレクトショップや催事等で取り扱われる機会が増えているのだとか。
森田さんも「ふるさと納税の返礼品にしたい」などとお話しされており、雪の降らない地域の方々には、物珍しく大変喜ばれるのではないかと思いました。

直面している課題
展示品に「俵ぐつ」と「かじかすべ」がありました。


とても綺麗な靴ですよね。
地元の私たちには馴染み深い、雪まつりぼんでんの時、大人たちが揃って履いているのを見たことはないですか?
私は幼少時代、かっこいい!と思っていました。
毎年横手市内の約10町内から、ぼんでん用に森田さんへ制作依頼が来るとのこと。
森田さんの手でも1日に2足しか作れず、今時期から制作に取り掛かっていると聞くと、その大変さが伝わります。
しかし、職人の数が減ってきているのが実状…。
森田さん自身も後継者問題に一番頭を悩ませていました。
「わら細工をしていた仲間がどんどん減り、後継者がいないのが残念。」
イベントに参加してくれた子供たちに伝えたいこと、感じてほしいことはあるかと聞くと、
「伝えたいことはたくさんある!でも、まずは興味のある子は是非続けてみてほしい。その子たちが私くらいの年齢になる頃には、絶対人間国宝になれる!」
と笑いながらお話ししてくれましたが、実際に起こりうることかもしれないですよね!

継承するために私たちができること
森田さんは美郷町の藁の会に所属され、継承活動に励んでいます。
美郷町には歴史民俗資料館があり、わら細工の展示品も多く、保存状態もしっかりされているのだそうです。
縄あみを家でもやりたい!とイベント時に出た廃材を持って帰る子供たちの姿を見て、学校では学べないことを体験させることや、できた!という喜びを感じる機会を与えてあげるのは、大人の責務なのではないかと思いました。
子供たちが知らない昔の日常を、まずは目で感じてもらう手始めに、資料館へ足を運ぶのはいかがでしょうか?
もしかしたら、わら細工の美しさに大人がハマってしまうかもしれませんね。
雪国秋田、横手の伝統や魅力を見えないところでサポートしてくれている森田さんに、まずは感謝を伝えたいです。
